13.『空海大字林』
「仁王経良賁疏」 勧修寺蔵
「金剛童子法」 
前田育徳会蔵
「剛」
13 『空海大字林』(講談社、1983・3刊。全2巻。B5−1638p. 39800円)
空海の書・三十点を字典化し、収録した六万字から四万字を選んで編んだもの。原稿の多くは八年に及ぶ大型カメラでの撮影行で自ら撮った実大写真なので、その書の濃淡や筆勢を正確に再現すべく、全字をスキャナー製版した。内外のあらゆる字典で最も書を正しく再現した美しい字典。七十頁の口絵と 別巻・二百四十五頁の解説がついている。「総論」は、空海の書・空海の書の編年整理・空海の書の展開。「解題篇」は、二十八点の書蹟についての各個解説。「研究篇」は、仁王経疏の研究、金剛童子法の研究で構成されている。−<著書一覧>参照


14.「空海真蹟の控文の出現で判明した『性霊集』の成立事情」
「越州帖」
「国使帖」 宮内庁蔵
14 「空海真蹟の控文の出現で判明した『性霊集』の成立事情」(『密教文化』 149号。高野山大学密教文化研究所、1985・1刊.。A5−48p.)
空海の遺墨のうち、「越州帖」「国使帖」「狸毛筆奉献表」は、草稿でも浄書本でもなく、空海の自筆の控文であることを、小稿でまず論証する。この三書は、空海の文を弟子の真済が控文をとって編成したとされる『性霊集』に収められているが、空海自筆の控文が遺されていたという事実は、『性霊集』が真済の企画と編集で成ったとする定説に疑問を生ぜしめる。三書の本文研究や『性霊集』との校合などを通じ、定説を覆し、『性霊集』は、不空の文集「不空表制集」に触発された空海が遠大な構想で企画し、初期に於いては自らも控文をとったものと推論した。