飯島太千雄 | ≪ 著 書 ≫ | 前|次 |
19.『漢字の絵本』全3巻(共著、共著者=乾侑美子)
1995年11月、小学館刊(B5変型、各冊18P、全Pカラー、各冊850円) 「雨のしずく」・「月のえくぼ」・「こわい山、やさしい山」 類書は、漢字の意味や構成、成りたちを説く本だが、本書は違う。本書は、一つの漢字が、どんなに多様で面白い表情をしているか、それを楽しむ本である。 面白がって、自ずと覚え、漢字ってこんなに面白いものか、そう感心する本である。本書に寄せられた、多くの子供の反応がそれを裏付けている。 本書の最大の壁は、1冊で1字しか……といった親の効率主義的な常識である。しかして、絶版。 飯島は、日本と中国の無量厖大な書から選字し、児童書翻訳家・乾侑美子が、飯島のもらす片言隻語から子どもにアピールすることばを拾い上げて文を作り、グラフィック・デザイナーの根本孝・圭子が刺激的な色をつけ形にした、ユニークな絵本である。 |
◆ | 「中国からきているかんじはかくかくしているけど日本の字はやさしい字だとはしりませんでした。あの三さつの本にかいている昔の字はすごくおもしろい字です」――風間暁 |
◆ | 「ぼくは、月のえくぼとかの本を読んで、かん字が中国からどんどんつたわって、日本にくるまでのかん字がよくわかりました。絵で、できたかん字とか、いろいろなかん字があっておもしろかったです。今から三千年ぐらい前のかん字でも、今とそっくりな字があってびっくりしました」――宇京裕之 |
◆ | 「かん字は、中国から、かんこく日本につたわっているから字はにています。でも日本の字はやっぱりやさしい字でした。中国や日本には、いろんな字があるから、すごいと思いました」――板垣真依 |
◆ | 「中国と日本では、形、強さや弱さなどがちがっていました。それにおこっているようなかん字や、やさしそうなかん字みんなそれぞれ表げんしていました」――長野祥子 |
(松江市立母衣小学校3年1組文集より) |
―― 子供たちは、日本と中国の文化の特質の違い、美学の相違、漢字の多様性への驚き、漢字のもつ表現力の豊かさを鋭く感じ取っている。それは私たち創り手の創造を遥かに超えた確固たる手応えだった―― |
(ホームページ「略歴」カット参照) |