1990年、飯島の企画・撮影、書玄制作による『良寛書蹟大系』全10巻が刊行された(全国良寛会編、教育書籍刊)。この本は、良寛の代表作272点を、原寸主義でカラー印刷した最高の美術書であるが、飯島はその編集過程で、偽蹟が氾濫、美術館でも偽物を展示するという状況にも拘らず、良寛の遺墨が全く把握も整理もされていない現状を憂い、全遺墨を網羅集成した資料集の必要性を痛感した。
良寛顕彰に多大の業績を残した安田靫彦画伯の子息・建一氏(中央公論美術出版社長)は、飯島の企画の意義を認め、私費を投ずる犠牲を顧みず、制作4年に及ぶこの大事業を完遂せしめた。
本書は、良寛研究の絶対資料であり、安田家の父子二代にわたる良寛顕彰の業績は永く江湖を裨益し続けよう。
本書には、明治以降、あらゆる良寛展の出品作から、単行本・雑誌を含め、公表・影印された良寛の書のほとんど総てが写真、釈文、解説を付して収録されている。その数、2000点を超える。
この中には、真蹟はもとより、偽物、他人の筆蹟も交っており、真贋の判定のみならず、向後の良寛研究は、本書を土台としなければ進展しない。
本書の刊行によって、初めて良寛研究は科学的なデータベースを勝ち得たのである。
飯島は各巻に「良寛墨蹟・文献総括表」を作成している。これは、2000余点の全データを公開したもので、向後の基本資料である。
編集委員・執筆者――加藤僖一・川口霽亭・谷川敏朗・長谷川四郎・飯島太千雄
制作/書玄
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